仕事が忙しいと、朝早く目覚める。
5時、外が気持ちいいのでマラソンに行く。
長野大橋を渡っていると、黒い虫を見付けた。
止まってよく見ると、ノコギリクワガタのメスだった。
もう1匹見付ける。
夜、橋の明かりに寄ってきたのだろう。
もうそんな時期かと、拾ってポケットに入れた。
子供の頃、クワガタのメスは「まんじゅう」と呼んでいた。
こいつに咬まれると、オスの比にならないくらい痛い。
血が出る。
彼女たちの小さなハサミは、腐った木に卵を産むため、
木の中に侵入するためにある。
ケンカをするオスの飾りのハサミではなく、実用的な物なのだ。
ポケットを気にしながら、大橋を渡りきろうとした時、すれ違った人と目が合う。
父だった・・・。
これはポケットに入らなかったので、そのまま走り去る。